Leaf Glass   >>>







天界と魔界・・・

争う二つの世界。



天使と悪魔・・・

互いの種族が互いを嫌う。




そんな中

ある悪魔がボロボロになって天界に現れた。

ある天使はそれをかくまった。

それが二人の出会い。






泣く天使と祈る悪魔














「ダルクー!!」


ここは魔界。
悪魔の住む世界。
空が見渡せる広い荒野に女の声が響いた。


空を見上げる男に女は必死に走って近づく。
よほど焦ってきたのだろう、はぁはぁと息を吐いている。
ダルクと呼ばれた男は女の方を見る。
黒い髪が少し流れ、赤い目が女を捕らえた。

「ダルク!!!『月』に行くって本当なの?!」

女は驚きを隠せずダルクに問う。
『月』に行くということは天界に行くということ。
悪魔がそこへ行くということは天界と魔界の関係をさらに悪くするのは目に見えていた。
しかも『月』は天使の罪人が閉じ込められているという。
その罪人の魔力を抑えるための聖の力が半端ではなかった。
そんなところへ悪魔が行くというのは自殺行為である。

「ああ・・・」

ダルクはあっけらかんと答えた。
それを聞いて女はさらに声を荒げていう。

「『ああ』ってそれだけ?!
 『月』に行くなんて自殺行為よ!!!
 しかも『月』には罪人といっても天使しかいないのよ?!
 なんでそんなところに行くのよ!!」
「・・・俺のせいで・・・『月』という牢獄に入れられたヤツを助けに行くだけだ」
「え?!俺のせい・・・って?!」

女のその問いには答えず
ダルクはもう一度空を見上げる。
その視線の先には遥か遠くの『月』があった。












ここは月。

天界の果てと呼ばれる所にある聖の力に溢れたところである。
しかしそこで暮らすのは天使でも罪を犯した者・・・罪人の天使。
月の膨大な聖の力も罪人の力を抑えるのに使われているのだ。

月は天界最大の牢獄。
それを知らない者もいる。
月を祈りの対象としている者もいる。
月で暮らしている者の中でさえ、
月で暮らしているのは名誉なことだと思っている者もいる。


ただ天使リグートにとって月は牢獄だった。


「リグート。
 また今日も泣いているの?」
外に近いところで佇んでいる女に男が優しく話しかける。

牢獄といっても柵があるわけでもなければ檻なわけでもない。
『月』とはそういう牢獄(・・・・・・)だった。
リグートと呼ばれた女は声がした方を静かに振り向く。
しかし言葉を発することはなかった。

「・・・」
「泣いてばかりいるじゃない。
 何がそんなに。」
「・・・私は・・・・・・」

少しの間をおいてリグートは静かに口を開いた。
しかし涙は止むことはない。

「人を売りました。
 大切な人・・・いえ、私を信じてくれていた人を売ったんです。
 自分のため・・・
 ・・・怖かったんです。脅された。
 けど・・・だからと言って心まで売ってしまっていいものではなかったのに・・・」

神に懺悔するように
静かに泣きながら、言葉にするリグート。

「・・・誰を売ってしまったの?」

男がそう聞いた瞬間
リグートは一瞬顔を引きつらせた。
何か怖いものでも見てしまったかのような恐怖の顔。
そんなリグートを見た男は子供か恋人かと思い静かに息を吐いた。
しかしリグートの口から出てきたのは想像もしなかったものだった。

「悪魔・・・」
「え・・・?!」
「悪魔を売ったの」
「えぇ・・・?!
 じゃあ、まさか君が・・・?!」
「・・・」
「・・・牢獄まで届いたよ。あの話・・・
 『悪魔が天界にいる』ってね」
「・・・」
「『匿っている天使がいる』とは聞いていたけど
 まさか君だったとはね・・・」
「・・・」
「・・・悪魔を売ったからって気にすることないよ。
 でも何でそいつは天界に?
 何で君は匿ったりしたの?
 そんなことしなきゃココにこなくてすんだんじゃないの?
 って・・・リグート?!」

リグートは男の言葉を背に受けて歩き出す。
向かうは『下』が見える星の泉。
そこからは『下』・・・魔界が見えた。
















荒野に来た理由・・・それは、
魔界で有数しかない神殿があるから。
誰もいない廃れた神殿。
そこに来るため・・・そして、『月』を眺めるために来た。

「ちょっと!・・・ダルク!
 神殿なんかに入ってなにする気?!」
「・・・『月』に行くんだよ」
「行くって・・・ほ、本気なの?!」
「・・・さっき言わなかったか?」
「・・・言ったけど・・・」

立ち止まる女を放って
ダルクは神殿の奥に向かう。
女はそんなダルクに気付いて後を追う。


神殿の奥には
『月』を覗くことができる輝く水晶が台の上に乗っていた。
その水晶の輝きは悪魔には少し眩しいかもしれない。
その水晶は悪魔を匿った天使が持っていたもの。
奪ったわけではない。
貰ったわけでもない。
魔界になんとか戻ることができた悪魔・・・ダルクの手に何故かあったもの。
ダルクは水晶の前に跪き祈る。


どうか天使(リグート)が無事でありますように。


水晶が泣いている気がした。













リグートは『下』が見下ろせる星の泉に来た。
そこから『下』を・・・魔界を見る。
そして、悪魔の顔を思い浮かべては泣く。
涙が枯れることはない。
天使が泣き止むことはない。
天使が罪の意識から逃れるまで。

私が売ってしまった。
今ごろはどうしているのか・・・
檻に入っているのかもしれない。
殺されてしまったのかもしれない。

ごめんなさい。
ごめんなさい。

星の泉に向かって泣く。謝る。
大丈夫だよ・・・と誰かが言った気がした。
リグートは下をふと見た。





END.


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・・・小説なのかこれ?!

はい。すいません;;
C/o/c/c/oの「あなたへの月」を聞いていて浮かんだストーリーなんです。(もちろんBGMはC/o/c/c/o!)
いやぁー暗い話ですいません;;終わり方も微妙だという・・・(苦笑)
短編なのでこれは続きません(多分)
「月が泣いている」というところから
天使が泣いていて、悪魔が助ける。みたいな話がいい!と思いました(笑)
最初は女の子同士で悪魔の子が攫われた(閉じ込められた)天使の子を助けよう!という話でした。
何故か男が女を助けるというありきたり系に(笑)でも気に入ってるので良し!
何でリグートが「売った」って言っているのかとか
ダルクが「助けられた」って言ってるのかわかんないかもですね;;
複線っぽい書き方したんで・・・(笑/をぃ)
なんにしても気に入っていただけたら嬉しいですv
ちなみに  リグート→Light  ダルク→Dark  です。


By.管理人*FUYUKO  2006/02/04


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