”アイリス”
それは、嘗ては『虹の橋』と呼ばれていた街だ。

虹の姿は今やなく、
日々の生活の中で人々は存在を忘れ、おとぎ話となっている。


この物語は、
寄せ集まりの仲間が築き上げていく、
ななつ色の物語・・・


かつてのアイリスの姿が失われて幾年が経ったであろうか。

畑だったところには家が、
川だったものは水路に、
虹色に輝いていた空は青一色に、
めまぐるしく変わっていった。

そう、500年もの間にすっかりと変わっていたのだ。

おとぎ話となった虹はどこへ行ったのか、
物語はまもなく始まろうとしている。


ななつ色のある街





『この世界は魔法と機械の世界。
 先に生まれたのは”色”を源とした魔法人”ヒューター”。
 のちに誕生したのは、色を心臓に持つ機械人”マーサー”。
 ヒューターの中でも優れた頭脳を持っていた伝説の人、
 サー=スレンが生み出した、
 身体は機械だが心を持つ者の二種族に大きく分かれている。』

そこまで読むと僕は本を閉じた。
傍にある上品な少し透ける白いカーテンが静かに揺れる。
僕の前髪も風に乗って揺れた。

今読んだ内容は、現在学校で習っている世界暦の授業の範囲だ。
「幼い頃から何度も聞いている、
 見知った話を今更授業でしてどうする気だ…」
はあと溜め息をついてみるが、それで何が変わるわけでもない。
机からふと目を離すと、風が流れてきていた窓から空が見えた。

今日も空は真っ青で、
濁りなんて一切見えず、澄みきっている。

朝日が少し眩しくて目を細めて見上げるが、
アイリスの空はいつも青くて、
空を見上げると僕の心なんて関係なく、世界は回っているのを実感する。

「空が僕の心を映してくれたらいいのに」

憂鬱な時には、曇り空。
悲しい時には、雨。
そうすれば、僕の心に反した
晴れた空を見て、自分がちっぽけなことに気づかなくて済むのに。

そんなありえないことを呟いて、もう一度溜め息をつく。
僕の心はいつも満たされない。

何か抜け落ちているような、

そんな感じで。

僕は今日も溜め息を吐く。


そろそろ朝食の時間だろうか。
壁にかかった真鍮の振り子が付いている時計に目を向けると、
背の二倍くらいある扉を押し開け、ダイニングに降りていった。










↑story.1まで

以下連載中。